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研究の読み物 12 / 生涯発達と知能

11歳の知能検査は、90歳の成績とつながる? 79年後の再テスト

11歳と90歳の検査結果には、どのくらいの関連があったのか。その数値の意味と、個人の将来を決めつけられない理由を考える。

2013・2025年の研究読了目安 約5分公開・資料確認:
この研究の数字79年

11歳から90歳までの間隔

人数や数値の意味は、本文で解説

11歳の頃、教室で解いたテスト。その解答用紙が残っていて、90歳になった自分が、同じ検査をもう一度受けるとしたら。学校を出て、働き、人と出会い、長い時間を過ごした後にも、子どもの頃の成績とのつながりはあるだろうか。

スコットランドには、その問いを調べられる記録があった。研究者たちは、11歳と90歳の検査成績が、どの程度関連するかを調べた。

11歳と90歳で、同じ検査を受けた106人

ディアリーらが2013年に報告した研究は、1921年生まれの同じ106人について、11歳と90歳の成績を比較した。用いたのは、どちらもモレイ・ハウス・テスト(Moray House Test)という知能検査だ。11歳の記録は、1932年のスコットランドの調査にさかのぼる。[1]

同じ人を、同じ検査で研究の測定時点を示す図。79年間の連続した成績データではありません。
11歳1932年の記録
90歳2011〜2012年の追跡調査

出典:[1]。両時点の分析対象は106人。研究には高齢期の別の測定時点もあります。

もし高齢期の検査しかなければ、その時点の成績が子どもの頃から高かったのか、途中で変化したのかを分けにくい。昔の答案があることは、研究にとって大きな違いになる。

相関0.54が示すのは、得点の「つながり」

11歳と90歳の成績の相関は0.54だった。子どもの頃に相対的に高い成績だった人ほど、90歳でも高い成績を取る傾向が見られたことを示す。公開された最終論文の抄録では、標本の得点範囲の偏りを補正した値として0.67も報告されている。[1]

研究結果を読むための区別 [1]。意味の解説は当サイトによるもの
数字や言葉意味すること意味しないこと
相関0.5411歳で成績の高かった人ほど、90歳でも高い傾向がある54%の人の点数が変わらなかった
個人差の安定性成績の高い人・低い人の傾向が、二つの時点である程度共通する誰もが同じ得点のままだった
補正した相関0.67標本の得点範囲を考慮した別の推定全員に当てはまる唯一の正解

たとえば、ある集団の全員の得点が同じだけ変わったとしても、並び順は変わらない。このような場合、平均点が変わったとしても、集団の中での相対的な順番は安定していることになる。これは説明用の仮定であり、この106人に実際に起きたことではない。

90歳で参加した人は、元の集団そのままではない

長い追跡では、誰が最後まで参加できたかも結果の一部になる。90歳まで生き、研究への参加が可能だった人は、最初に検査を受けた子ども全体から、無作為に選ばれた人たちではない。研究者は、追跡集団の子ども時代の成績が、元の母集団より高く、分布も狭いことを論じている。[1]

だから「人間の知能は79年間、この強さで安定する」と、すべての地域や世代へ広げるのは慎重でありたい。79年間という貴重な追跡結果も、誰が最後まで参加できたかを踏まえて読む必要がある。

では、赤ちゃんの頃から分かるのか

11歳の結果と90歳の関連があっても、「もっと早く測れば同じように分かる」とは限らない。測る年齢が違えば、使う課題や測定の確かさも違う。

2025年のガスタフソンらの研究は、コロラドの縦断双子研究1,098人のデータで、乳児期から29歳までを検討した。乳児期の二つの指標と成人期の一般認知能力との相関は0.16、0.18と報告され、乳児期の測定は後の能力を予測する力が弱いことが示されている。[2]

この数値と0.54を並べて、「何歳からなら正確」と境界を引くことはできない。人も課題も追跡期間も違うからだ。ここで確かめたいのは、11歳の研究結果を、そのまま乳児期へ持ち込めないという点である。

成績の関連が続いても、個人の人生が決まるわけではない

安定した個人差があることは、人生の中で何も変わらないという意味ではない。安定している部分が分かれば、そこから外れた変化を、別の問いとして調べられる。

子どもの頃の成績は、高齢期の認知能力を理解する手掛かりになる。しかし、昔の得点一つで、その人がどんな経験をし、何ができるようになったのかまでは分からない。過去の記録を生かしながら、今の本人の様子も確かめる。その両方が大切になる。

原典・参考文献

研究結果には本文中の番号を付けています。図表は当サイトで作成し、説明用の仮定や編集部の考えは、観察された結果と区別しました。

  1. [1] Deary, I. J., Pattie, A. & Starr, J. M.(2013)
    The Stability of Intelligence From Age 11 to Age 90 Years: The Lothian Birth Cohort of 1921. Psychological Science, 24(12), 2361–2368.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    大学公開の著者版本文と、PubMedの最終論文抄録を照合。補正相関0.67は最終論文抄録に基づきます。
  2. [2] Gustavson, D. E. et al.(2025)
    Stability of general cognitive ability from infancy to adulthood: A combined twin and genomic investigation. PNAS, 122(21), e2426531122.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    公開抄録の人数、測定時期、乳児期の指標と成人期の相関を確認。個々の乳児の将来を判定する記事ではありません。