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研究の読み物 08 / 年齢と認知機能

頭のよさのピークは、何歳なのだろう。4万8千人のデータで見えた違い

速く処理する力、覚えておく力、言葉の知識。成績が最も高い年齢は、能力によって違った。

2009・2015年の研究読了目安 約5分公開・資料確認:
この研究の数字48,537

オンライン研究の参加者数

人数や数値の意味は、本文で解説

初めて使う道具の操作を、すぐに覚える人がいる。一方で、言葉の微妙な違いや、話の背景を詳しく説明できる人もいる。私たちは、どちらにも「頭がいい」と感じるのではないだろうか。

では、頭のよさがいちばん高くなる年齢は、いったいいつなのだろう。ひとつの年齢を答える前に、何を測るかを決めなければならない。2015年の研究は、この問いを課題ごとの成績から調べた。

課題ごとに、成績が高い年齢を比べる

ハートショーンとジャーミンは、知能・記憶検査の標準化データと、オンラインの課題成績を組み合わせて検討した。論文が報告するオンライン参加者は計48,537人。全員が同じ30課題を受けたのではなく、異なる実験や再検証の参加者を含む数である。[1]

研究で比べたのは、年齢が違う人たちの成績である。すばやい記号処理、一時的に情報を保持する課題、語彙などを分けると、成績が最も高い時期はそろわなかった。[1]

処理の速さと、言葉の知識ではピークが違った

論文の傾向を整理した比較。得点やピーク年齢の再現図ではありません [1]
課題の例研究で見られた傾向この結果の読み方
記号をすばやく処理する比較的早い時期に高い成績速さが必要な課題の傾向
情報を一時的に保持する記号処理より遅い時期まで高い成績記憶にも課題ごとの差がある
単語の意味を知っているさらに遅い時期に高い成績経験とともに蓄える知識の側面

面白いのは、同じ語彙でも、検査の標準化データではおよそ50歳、オンラインのデータではおよそ65歳に、成績が最も高かったことだ。ひとつの「語彙のピーク年齢」すら、使う資料で変わる。[1]

この結果から「65歳が最も賢い」とは言えない。ピーク年齢を比べるときには、どんな課題を、どの時代に、誰が受けたのかも確かめる必要がある。ここは、結果を踏まえた編集部の考察だ。

同じ人を追えば、それで解決する?

年齢の違う人の比較には、受けてきた教育や暮らした時代の違いが混じる。ならば、同じ人を長く追いかければよさそうだ。しかし、そこにも別の難しさがある。

ソルトハウスの2009年の研究は、年齢の違う人を一度に比べる横断研究と、同じ人を長く追う縦断研究の違いに注目した。同じ検査をもう一度受けると、前に受けた経験が成績に影響する。その再検査の効果が、年齢による変化を見えにくくする可能性を検討している。[2]

研究方法の違い。当サイトによる説明
調べ方強み気をつけたいこと
異なる年齢の人を比べる広い年齢範囲を短期間で調べられる世代や参加者の構成が違う
同じ人を後から測り直すその人自身の変化が見られる検査に慣れる影響があり、途中で参加をやめる人もいる

集団の平均から、一人ひとりのピークは決められない

仮に、ある年齢の集団で平均が最も高くても、そこにいる全員が自分の最高記録を出しているわけではない。高い成績が続く年齢の幅を、一つのピーク年齢で表している場合もある。集団の平均値から、その人の限界を決めることはできない。

また、課題の点数は、仕事や暮らしで発揮できる力の全体ではない。会議で論点を整理すること、知らない言葉を調べること、経験のある人に相談すること。日常の問題を考えるときには、処理の速さだけでなく、知識や経験、周囲の助けも使える。

「もうピークを過ぎた」より、何を使って考えるか

この研究を読んで年齢を気にするなら、「自分の頭は何歳で終わるか」より、「今やっていることには何の力が必要か」と考えたい。速さを求める作業と、知識や経験をもとに考える作業では、困り方も助けになる工夫も違うはずだ。

「何歳が一番賢いか」という問いには、一つの年齢では答えにくい。何を測ったのかによって、成績が高い時期は違う。それが、この研究で見えてきたことだ。

原典・参考文献

研究結果には本文中の番号を付けています。図表は当サイトで作成し、説明用の仮定や編集部の考えは、観察された結果と区別しました。

  1. [1] Hartshorne, J. K. & Germine, L. T.(2015)
    When Does Cognitive Functioning Peak? The Asynchronous Rise and Fall of Different Cognitive Abilities Across the Life Span. Psychological Science, 26(4), 433–443.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    論文本文と図の説明を確認。ピーク年齢を個人の予測値としては扱っていません。
  2. [2] Salthouse, T. A.(2009)
    When does age-related cognitive decline begin?. Neurobiology of Aging, 30, 507–514.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    著者所属大学が公開する本文を確認。再検査の効果と研究方法の比較を参照。