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研究の読み物 10 / 脳画像と知能

脳が大きい人ほど、頭がいい? 「相関0.24」をそのまま読んでみる

関連はある。でも、脳の大きさを測ることと、その人の知能を知ることは同じではない。

2015・2019・2022年の研究読了目安 約5分公開・資料確認:
この研究の数字r = 0.24

2022年のメタ分析で得られた相関の推定値

人数や数値の意味は、本文で解説

「脳が大きいほど頭がいい」と聞くと、分かりやすい話に思える。考える器官が大きいのだから、その力も大きいのではないか。けれど、体積という一つの数字で、人の考える力はどこまで分かるのだろう。

研究の答えは、完全な無関係でも、体積だけで決まるという話でもない。ここでは、関連があることを認めたうえで、その関連の大きさを確かめる。

複数の研究で見られた、脳の大きさと知能の関連

ピーチュニクらは2015年、88本の研究に含まれる148の参加者集団、合わせて8,000人超のデータをまとめて分析した。こうした分析方法をメタ分析と呼ぶ。脳の体積とIQの相関は0.24で、脳が大きい人ほどIQが高い傾向が見られた。強い関連が見つかった研究ほど公表されやすい「出版バイアス」を考慮しても、この傾向は確認された。[1]

同じ著者らは2022年、86本の研究に含まれる194の参加者集団、計26,000人超のデータを分析した。今回は、分析方法を変えたときに相関の値がどのくらい変わるかも調べている。全体としては0.24程度と推定されたが、分析方法によって値には幅があった。[2]

二つのメタ分析には、同じ研究が含まれている。そのため、参加者数を単純に足して「別々の34,000人を調べた」とは言えない。また、一つの研究で複数の集団を調べることもあるため、研究の本数と参加者集団の数は区別している。

相関0.24は、どのくらいの関係なのか

相関係数は、二つの値がどの程度一緒に増減するかを示す。1なら完全な正の直線関係、0なら直線的な関連がない状態を表す。相関0.24は、脳の体積が大きい人ほどIQが高い傾向はあるものの、個々の得点には大きなばらつきがあることを示している。

相関の数字からは言えないこと。当サイトによる解説
よくある読み替えなぜ違うのか
脳の大きさが知能の24%を決める相関係数は原因の割合ではない
MRIを見れば誰が賢いか分かる集団での関連は個人の正確な判定を保証しない
帽子のサイズでIQを予測できる研究が扱う脳体積と、頭の外側の寸法は同じではない

2015年の論文は、相関を二乗した値も約0.06と示す。ただし、これも「知能の6%が脳の大きさによって作られる」という因果的な内訳ではない。[1]

事前登録で、分析方法を先に決めておく

ネイヴらは、英国の成人13,608人のデータを用いた事前登録研究を報告した。事前登録とは、結果を見た後で都合のよい分析だけを選ばないよう、方法を先に記録することだ。この研究での脳全体の体積と流動性知能課題の相関は0.19だった。[3]

研究が報告した相関係数棒の長さは0〜1の同じ尺度。同じ条件で繰り返した実験ではありません。
2015年 メタ分析
0.24
2019年 事前登録研究
0.19
2022年 メタ分析
0.24

出典:[1]〜[3]。標本・知能の測り方・分析方法が違うため、数値の差だけで増減の傾向は判定できません。0.19の研究は2018年オンライン公表、2019年の巻号に掲載。

年齢や身長などを考慮する分析も行われたが、観察研究であることは変わらない。事前登録は分析の透明性を高める工夫であり、相関を因果関係に変える仕組みではない。[3]

大きさを変えれば、知能が変わるのか

ここまでの研究は、体積と成績がどのくらい関連するかを調べている。脳の体積だけを増やす実験をして、その分だけIQが上がったと確認したわけではない。

さらに、総合IQと、限られた課題で測る流動性知能は完全に同じ指標ではない。数値を比べる前に、何を知能の指標としたかをそろえて読む必要がある。

脳の大きさだけでは、一人ひとりのIQは分からない

脳の体積と知能には、集団全体で見ると関連がある。しかし、体積だけで一人ひとりのIQを正確に予測できるわけではない。相関0.24という数値を読むときは、関連の有無だけでなく、その強さにも目を向けたい。

「関連があるのか」と「それを使って一人を判断できるのか」。科学の記事を読むときには、この二つを別の質問として持っておきたい。

原典・参考文献

研究結果には本文中の番号を付けています。図表は当サイトで作成し、説明用の仮定や編集部の考えは、観察された結果と区別しました。

  1. [1] Pietschnig, J. et al.(2015)
    Meta-analysis of associations between human brain volume and intelligence differences: How strong are they and what do they mean?. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 57, 411–432.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    公開抄録の研究数、サンプル数、相関、出版バイアスに関する記述を確認。
  2. [2] Pietschnig, J., Gerdesmann, D., Zeiler, M. & Voracek, M.(2022)
    Of differing methods, disputed estimates and discordant interpretations: the meta-analytical multiverse of brain volume and IQ associations. Royal Society Open Science, 9, 211621.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    著者所属大学が公開する抄録を確認。研究全体の代表値と、分析方法による違いを区別。
  3. [3] Nave, G. et al.(2019)
    Are Bigger Brains Smarter? Evidence From a Large-Scale Preregistered Study. Psychological Science, 30(1), 43–54.

    論文の掲載ページ(DOI) ↗ 確認した公開資料 ↗

    出版社の公開抄録と事前登録・データ公開の説明を確認。