「上の子はしっかり者」「下の子は要領がいい」。きょうだいについて話していると、そんな言葉が自然に出てくる。では、知能検査の成績にも、生まれた順番による違いはあるのだろうか。
研究には、上の子の平均得点がわずかに高いという結果がある。ただし、「だから、うちでも上の子の方が賢い」と結ぶと、統計の話から離れてしまう。まずは、研究者がどの家庭の、誰と誰を比べたのかを見てみよう。
別の家庭の比較と、同じ家庭の比較を組み合わせる
ローラーらの2015年の研究は、米国5,240人、英国4,489人、ドイツ10,457人のデータを扱った。計20,186人は、三か国の調査の参加者を合計した人数で、すべての分析や知能検査に同じ人数が使われたという意味ではない。[1]
研究者は、別々の家庭の人を比べる分析に加えて、同じ家庭のきょうだいを比べる分析も行った。家庭の人数や背景が違う人を、単純にまとめて比べることを避けるためだ。[1]
| 比べ方 | 比べる相手 | 比較の特徴や注意点 |
|---|---|---|
| 家庭の間で比べる | 別々の家庭の第1子と、それより後に生まれた人 | 家族人数などは別に考慮する必要がある |
| 同じ家庭で比べる | 同じ家庭のきょうだい | 家庭で共通する条件の一部 |
平均差は、個人差よりずっと小さい
知能検査では、生まれ順に沿った小さな差が確認された。論文では、第1子と後に生まれた人との差を、およそIQ1.5点と説明している。[1]
0.10は1.5÷15による編集部の計算。参加者一人ひとりの得点差や、差の原因を表す数値ではありません。
これは、弟や妹が必ず1.5点低いという意味ではない。たとえば、二つのクラスの平均点が少し違っても、一人ずつ見れば高い人も低い人もいる。集団の平均差を知っただけでは、特定の二人の順番は決められない。
なお、この研究では外向性や勤勉性など、調べた主な性格特性には、生まれ順による一貫した差は見つからなかった。知能で見られた差を、そのまま性格の決めつけへ広げることもできない。[1]
「先に生まれた」と「上の子として育った」を分ける
2007年のクリステンセンとビエルケダールの研究は、ノルウェーの約25万人の徴集兵のデータを使い、生物学的な出生順と、家族の中で育った際の立場を区別した。結果は、生物学的に何番目に生まれたかよりも、家庭の中で何番目の子として育ったかが関わる、という説明を支持した。[2]
「最初の妊娠だから違うのか」「家庭で接する相手や経験が違うのか」。似て見える二つの問いを、別々にしようとした研究である。
ただし、これで親がどのように接すれば何点上がるかが分かったわけではない。結果に合う説明が得られたことと、家庭内の具体的な原因を一つに特定したことには距離がある。
家庭内の比較でも、すべての条件はそろわない
家庭内比較は便利だが、きょうだいの間で異なる条件まで、すべて取り除ける方法ではない。生まれた年、親の年齢、周囲の状況、その後の経験は異なる。生まれ順を実験で無作為に割り当てることもできない。
さらに、ノルウェーの研究は徴集兵の男性、2015年の研究は米英独のデータである。日本のあらゆる家庭に、同じ大きさの差があると確認したものではない。
生まれ順で決めつけず、その子の様子を見る
「第1子だから期待できる」「末っ子だから仕方ない」。研究結果にそんな役割を与える必要はない。平均差を調べる問いと、一人の子どもの学びを助ける問いは違うからだ。
家族の中で違いを感じたなら、どんな説明なら分かるのか、何に興味があるのかを聞く方が、その子のためになる。生まれた順番は変えられないが、次に渡す本や、一緒に考える時間は選べる。これは、この研究が実証した支援方法ではなく、結果を踏まえた編集部の考えである。
原典・参考文献
研究結果には本文中の番号を付けています。図表は当サイトで作成し、説明用の仮定や編集部の考えは、観察された結果と区別しました。
[1] Rohrer, J. M., Egloff, B. & Schmukle, S. C.(2015)
PubMed掲載の抄録・図の説明と、公開本文の検索可能な記載を照合。人数はパネル全体と各分析を区別。
Examining the effects of birth order on personality. PNAS, 112(46), 14224–14229.[2] Kristensen, P. & Bjerkedal, T.(2007)
著者所属研究機関が公開する抄録を確認。詳細な群別得点は掲載していません。
Explaining the Relation Between Birth Order and Intelligence. Science, 316(5832), 1717.